隈研吾氏と「リノベーション」の考え方

今週は、ビッグサイトで開催された建材・住設EXPOに。先日、パシフィコで開催された賃貸住宅フェアにも行ってきたのですが比べ物にならないくらいのすごい人!!

初日の隈研吾氏のセミナーに参加してきました。

『様々な建築事例から考える、隈研吾のリノベーションの世界観』隈氏がこの数年間、手掛けてこられたリノベーション案件のお話を伺うことができました。

会場は入りきらないくらいの人!!

隈氏といえば、商業含め数々の建築物、重要文化財の再現・リノベーションを手掛けていらっしゃる、世界的な建築家。

東京・パリにオフィスがあり、海外のリノベーション案件も多く手掛けていらっしゃる、もちろんオリンピックスタジアム(国立競技場)も記憶に新しいですね!

荒れ果てた石蔵~那須 芦野

栃木県那須の『石の美術館』。産地の石材を積み上げて造られた石の美術館は、大正時代~昭和初期に建てられた石蔵をリノベーションしたもの。

以前は米蔵として使用されていたが、1970年代以降は放置されたままだった。

リノベーションの依頼時、予算がなく「産地の石材ならいくらでも提供できる」とのことからの設計の裏話がおもしろかった!

「可能性」を生み出すことが設計者の役割でもあることを再認識!

組積造は、石・レンガ・ブロックなどを積み上げて造る構造であり、ヨーロッパではよく見られる構造体。

壁によって屋根、天井などの上部構造物を支える仕組みになっているが、欠点として強度が弱い。

石の美術館は、石壁の内側に木の柱組を加えることで構造面をカバーしている。

総石造りの建築物、『石の美術館』は、イタリアのヴェローナで隔年に授与される、『国際建築石材大賞』を受賞している。

日本の石材建築作品としては「石の美術館」が初の受賞らしい。

敷地全体がひとつのアートを鑑賞する散歩道として再構成された建物。石の美術館

同じく栃木県のJR宝積寺駅の複合施設、『ちょっ蔵広場』。

産地である大谷石のブロックを積み上げるのに、石と石の間に構造補強として鉄板を入れることによって構造を創り上げる

提案された構造設計の新谷先生のアイデアが非常に斬新で、柔らかい思考と感じました。

意匠設計にとって、良い構造設計と一緒に取り組むことで、良いアイデアを出していける。これはとても大事なこと!

大谷石の独特の素材感や質感、重厚感と抜け感や透明感のギャップがおもしろい。

リノベーションの仕事とは

「既に別の人物の設計によって建てられた建築物で在り、一人ではなくその設計者と対話しながら仕事をすることが出来る非常に楽しいもの」

リノベーション=再生、相手(元の設計者)との対話そして「環境との対話」がとても大切であり、

「周りのセッティング」をしていくことが重要と。

その、「環境との対話」こそ建築業界の未来があるのでは、とのことを述べられていました。

東京、世田谷区等々力(とどろき)にある芸術家の村井正誠(まさなり)氏の個人邸

彼の生誕100周年を記念し改装された『村井正誠記念美術館』。こちらのリノベーションは、

外壁の一部に廃材をリサイクルし(使われていた建材をリサイクル)、当時の面影を再現した過程を

お話ししてくれた。ご本人がアトリエとして使われていた部屋はそのまま残されている。

「時間の経過とともに、佇まいと空間の美しさが増していく」ことを体感できる建築物。

ほかにも、日本最古のデパート日本橋三越の改装、吉田五十ハ(Isoya Yoshida)氏が設計した第4代歌舞伎座の建て替えの話も興味深かった。

海外のリノベーション事例

また、近年の中国においては『建築保存』という思考では、日本の一歩先をいっているとのお話もされていました。

たしかに中国では歴史的保存物の見直し、文化や芸術に対する考え方が昔と比べ変化していると感じます。

(私が知らないことも多いのですが)都心部では新しいものがどんどん造られていっているイメージですが、一方で、古い建築を残していくという思想があるようです。

『建築保存』という考えは、世界遺産のように「保存する」(そのまま残す) という考えではなく、保存しつつ、利用していくために継続していく、というひとつの考え方だと

わたしは考えます。

隈研吾氏が、現在手掛けていらっしゃるポルトガル2都市(ポルトとリズボン)の建築物の改装、サンパウロの『ジャパン・ハウス』の改装なども非常に印象深い内容でした。

ブラジル、サンパウロにある『ジャパン・ハウス』は、外務省による日本文化の海外発信の拠点としてスタートしたプロジェクト第一号。

サンパウロの中心街にある銀行の支店をリノベーションした、複合的施設。

ファサードにはヒノキの木材をランダムに組み、インテリアの一部には和紙を使用、温かい和の空間をつくりあげた作品。

施工の段階では和紙作家の小林康夫氏を現場に迎え、実際に現地のブラジル人に和紙のつくりかたを伝授したことも大変興味深かった!

構造面としては、カーボンファイバーを使用することで強度を高めた。カーボンファイバーは実際、鉄の数倍の引っ張り強度を持つので、

それによって大スパンが可能となった過程を伺うことが出来ました。

リノベーションの新しい技術もどんどん進化し、実現できることもどんどん増えていくのでしょう。

建築物を継承していくことは、歴史を継承し文化を継承すること。

隈氏の「建築物の再現」に対するフィロソフィーを、ユーモアたっぷりに聴くことが出来、とても有意義な時間でした。

進化するリノベーション技術を取り入れ、海外でのリノベーション事例にも目を向け参考にしていきたいと思います。

なかなかグローバルに動けるのはまだ時間がかかりそうですが..!

 

 

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